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一般社団法人 日本整形内科学研究会

JNOS 第3回九州・沖縄ブロック研修会 講演抄録 - お知らせ

一般社団法人 日本整形内科学研究会にて、2019年6月9日(日)に福岡において開催するJNOS 第3回九州・沖縄ブロック研修会 in Fukuokaの講演の抄録が確定いたしました。

非常に、興味深い内容となっておりますが、本日現在、若干の空席のみとなっております。お早めにお申し込みすることをお勧めいたします。

お申込み方法等の詳細はこちらのページを参照ください。

JNOS 第3回九州・沖縄ブロック研修会 in Fukuoka  2019年6月9日(日)

疼痛・自律神経症状治療のネクストステージ

弘前大学総合診療部、JNOS学術局長 小林只

 

「あの患者は、不定愁訴が多いですね」

「あなたの症状は、自律神経の問題なので精神科に紹介しますね」

「検査に異常がないですから、気のせい(メンタル)ですよ」

と思考停止していませんか?

精神疾患は身体疾患の除外診断ではありません。自律神経症は、「症symptom」であり、その原因や病態を分析する必要がある病名です。不定愁訴という言葉は、「私には理解できない愁訴(症状)」と自覚することが大切です。臨床医学は、患者の困り事に真摯に対応する態度と、目前に起きている事象を分析・言語化する技術に基づきます。診断の定義「解剖anatomy×病態生理pathophysiology×原因etiology」に基づくと、現在、何気なく使用している病名が実は、解剖的にも病態生理的にも現代医学では十分に判明していないことに気付きます。

この解明の糸口の1つが、自律神経(交感神経と副交感神経の分布とバランスと緊張度の評価)とファシアfascia(「目視可能な固有結合組織の線維成分の構成体(≒”いわゆる”線維性結合組織)」で、筋膜myofasciaに加えて腱、靱帯、神経線維を構成する固有結合組織、脂肪、胸膜、心膜など内臓を包む膜など骨格筋と無関係な部位の結合組織を含むもの」です。この新しい解剖学的概念は、2018年6月、30年ぶりの改訂となった「国際疾病分類・第11回改訂版(ICD-11)」において、基本体組織として記載され、内臓・運動器など、生体を扱うあらゆる分野で注目されています。心臓神経症の原因が背部の多裂筋、開腹術後の創部への腹膜リリース注射、パーキンソン病など錐体外路症状に合併するファシアの症状など非常に多彩です。

近年、超音波診断装置(エコー)が運動器診療で台頭してきました。しかし、患者の症状部位に原因(発痛源)があるとは限りません。局所分解能が高く、動きを評価できるエコーは、従来のレントゲン・CT・MRIにはない利点があります。ファシアの重積(stacked fascia)というエコー画像所見も注目されています。しかしながら、適切な評価・治療には、エコー以外の問診・診察がなによりも重要です。

ファシアの観点からみた評価は、「エコーが役立つ局所解剖の精密性」と「アライメント・姿勢などの全身のネットワークとしての機能評価」が重要です。そして、自律神経の評価には、解剖学的評価による局所交感神経緊張(例:痛み・しびれ・冷えの増悪)、持続的な内臓神経刺激による局所副交感神経緊張(例:嘔気・下痢)、低酸素血症や質的栄養障害などによる細胞レベルのATP産生低下による全身の交感神経緊張(例:動悸、汗、ほてり)や全身の副交感神経緊張(例:倦怠感、過眠)などの機能的評価が重要です。

例えば、交通事故後の、いわゆる“むち打ち症”で、めまい・耳鳴・文字が読みにくい・眩しい・滑舌が悪くなった・飲み込みにくい・声が出なくなった・顔がほてる・頭がしびれる・顎が痛い、など多様な症状があります。ファシアと自律神経の評価例としては、後頭下筋の損傷(Myofascial painや付着部症)による眼球運動障害から生じるめまい症や文章が読めないという症状、事故時の噛みしめによる顎関節症や舌・舌骨の可動性低下による嚥下障害・構音障害・頭痛・交感神経緊張、上位頚神経根症(C1~C4)と浅・深頚神経叢・頚神経ワナの障害による頭頚部痛や上頚神経節障害、頚動脈周囲のファシアの異常による交感神経過緊張、下位頚神経根障害による上肢や胸背部痛・シビレ感などが、1つ1つ紐解けるものが増えてきました。同時に、それぞれに対応する局所治療も可能になってきています。

今回は、ファシアの局所治療(生理食塩水によるハイドロリリース、鍼、徒手)の適応と限界、エコー診療の注意点を意識しつつ、①ファシア総論、②患者の愁訴を「事実」と「感情・考え(思い込み)」に適切に分離するコミュニケーション技術(事実質問法fact question)、③解剖に基づく機能評価の考え方、④自律神経症状の分析・評価方法、を実演含めて提示します。

  • 参考書籍1:松岡史彦, 小林只: プライマリ・ケア–地域医療の方法-. メディカルサイエンス社. 2012.
  • 参考書籍2:木村裕明, 高木恒太朗, 並木宏文, 小林只. 解剖・動作・エコーで導く Fasciaリリースの基本と臨床~筋膜リリースからFasciaリリースへ~. 東京: 文光堂, 2017.