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一般社団法人 日本整形内科学研究会

一般の方へ

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一般社団法人日本整形内科学研究会は、「Fasciaに関連した痛みなどの症状に対する診療・学術・教育・研究の発展」を主目的の1つとして活動をしております。

『Fasciaリリース』を提唱しています。筋膜=Fasciaではありませんので、我々は「筋膜リリース」という用語も原則使用していません。

最近テレビや雑誌で筋膜リリースという言葉をよく耳にすることがあるかもしれません。

情報が混乱していますので、私たちは一般の方々にも誤解のないようにFasciaという言葉を正しく理解していただきたく啓蒙させていただいております。


整形内科とは?

メスを使った、いわゆる外科的な手術以外の治療方法(局所注射、運動療法、徒手療法、認知行動療法、薬物療法など)を用いて、医師・歯科医師やリハビリスタッフ・鍼灸師などの多職種で、手足腰などの体の痛みの治療を行う分野です。


筋膜性疼痛症候群,MPSとは?

いわゆる「筋のコリ」による症状をきたす、世界中で一般的な病気です。

「筋痛症(きんつうしょう)」とも言われますが、線維筋痛症と間違わないでください。お医者さんでもMPSの存在を知らない人はまだたくさんいます。(Q3 参照

筋膜は英語でMyoFascia(マイオ・ファシア)と言い、Fascia(ファシア)の一部です。

通常、我々が急激に重い物を持ったり、無理な姿勢等により繰り返し筋に負荷をかけたりすると、筋に過剰な負荷がかかります。

筋への過剰な負荷は、いわゆる「筋肉痛」として生じ、数日程度で回復をします。

しかし、負荷が繰り返したり、寒冷にさらされたり、血行の悪い状態が続いたりすると、筋が短期間では回復できなくなります。

この状態が筋膜性疼痛症候群(MPS)になった状態です。筋膜性疼痛症候群(MPS)では一般的な筋肉痛とは異なり、痛みやしびれの強さが相当激しいものになり、更に痛みやしびれの範囲が広範囲に発生する傾向にあります。


異常なFasciaによる症状

肩の痛み従来、症状があるのにレントゲンやMRIでは異常なしと言われた経験はありませんか?

もしかしたら筋膜性疼痛症候群(MPS)の可能性があるかもしれません。

この病気は全身のあらゆるFasciaの異常で起きる可能性があります。

また、異常なFasciaの場所によっては、広い範囲で痛み、しびれを感じます。

例えば以下のような例があります。


異常なFasciaの場所 痛み、しびれが広がる部位
小殿筋(足の付け根付近) 足の付け根から足首にかけての足全体
上後鋸筋(背中の肩甲骨付近) 肩から指先まで腕全体
腰方形筋(腰の背骨付近) 腰及びお尻の広い部分

また、痛み、しびれを感じる部位が、時間の経過と共に移動する事があるのも、この病気の特徴の一つです。


MPSが原因で生じる症状によく似た病気

合併していることも多いですが、MPSなどのFasciaの異常が原因で生じる症状によく似た病気として以下があります。

  • 筋緊張性頭痛
  • 偏頭痛
  • 顎関節症
  • 舌痛症
  • 頚椎症
  • 頸肩腕症候群
  • 胸郭出口症候群
  • 五十肩
  • 肩関節周囲炎
  • テニス肘
  • ゴルフ肘
  • 手根管症候群
  • 腱鞘炎
  • 椎間板症
  • 椎間板ヘルニア
  • 脊柱管狭窄症
  • 腰椎すべり症
  • 変形性股関節症
  • 変形性膝関節症
  • 半月板障害
  • 糖尿病性神経障害 他

また、異常なFasciaの部位により、以下のような症状がでたり、病名がつくことがあります。

  • めまい(非回転性)
  • 動悸感
  • 心臓神経症
  • しびれ感
  • 耳鳴り
  • 機能性胃腸症
  • 胃けいれん
  • 生理痛
  • 排尿時痛
  • 排便時痛・肛門痛 他

治療方法

まだ治療法方が十分に確立された状態とは言えません。

局所治療、運動療法、認知行動療法が治療の中心であり、薬物療法は限定的に使用されます。

特に、非癌性疼痛患者さん(がんではない慢性疼痛の患者さん)への “安易な”オピオイド(モルヒネの類)や抗うつ薬などの向精神病薬の使用は、世界中で注意喚起がされています(適切に管理され良好な治療経過の患者さんもいますが)。もちろん、がん患者さんの痛みや苦しみを緩和するためのオピオイドは十分量が早期かつ適切に使用される必要があります。

局所治療は、現時点では、治療法は直接法と間接法の二つに大きく分けることができます。そして、どちらか一方だけを行うのではく、組み合わせて行われること理想的です。

直接法(例:Fasciaリリース)

直接法は、痛みの原因になっている異常なFasciaに生理食塩水や局所麻酔薬を注射したり、鍼、徒手(手技)などを用いて直接病変部にアプローチして、Fasciaの異常な状態を解消する方法です。なお、これらの治療は痛みもほとんど無く、安全性も高い方法です。

(*)注射によるFasciaリリースを、国内ではFasciaハイドロリリースとも表現されています。

当会では、エコーガイド下Fasciaリリース超音波診断装置(エコー)を使って、異常なFasciaをより安全、確実に解消を行う技術の研究と研鑽を行っております。

患者自身もエコー画像を見ることで、自身の病変部を認識し、リハビリテーションや運動療法、さらには認知行動療法にも繋がる可能性があります。


間接法(例:リラクゼーション・認知療法、ある種の鍼・徒手)

病変部を直接治療せずとも、病変部に影響するFasciaや関連組織を十分にリラックス(リラクゼーション)させることで、病変部から生じる痛みを緩和することもできます。これを間接法といいます。

ある種のリラクゼーション・テクニックを使った徒手治療や、経絡鍼治療(ツボへの治療)なども含みます。

また、認知療法としての不安の除去による効果は、全身の緊張緩和、あるいは病変部からの痛み刺激の脳の感じ方に影響し、症状緩和に寄与します。



治療の期間

通常はある程度の回数を、時間をかけて治療する必要があります。

症状が強く日常生活が困難な痛みがある場合は数ヶ月にわたる治療を必要とする場合もあります。

患者さんの病態に応じて、上記の様々な手法を組み合わせて治療することが重要ですが、最適な組み合わせは、まだ十分に分かっていません。


Q&A

Q1 私は現在近所の整形外科に通院していますが、私の症状と全く同じなのですが、どういうことですか?

A)症状は同じように思えても、医学的な診察では別の症状であることも稀ではありません。

一方で、MPSが原因で生じる症状によく似た病気が多いのも事実です。

Q2 変形性膝関節症と診断されていますが、MPSの可能性もあるのでしょうか?

A) 変形性関節症という病気は、「関節が変形している状態」という病名であり、変形していること、あるいは軟骨がすり減っていること、と痛みとの関係は十分に分かっていません。

関節が変形することで、滑膜炎など関節の中に炎症(腫れ上がっている状態)が起きている場合は、膝関節炎(膝関節の炎症)という病名が別につき、痛みの原因となります。

その他にも、骨の変形により負担が強くなったスジ(腱や靭帯など)や筋(MPSなど)の痛み、関節の近くにある神経の痛み、稀に軟骨の下の部分の骨の痛みなどがあります。

これらの痛みの原因はいくつも同時に存在することもありますし、人によってその割合や進行度合いが異なります。

そのため、痛い場所の丁寧な診察はもちろんのこと、必要に応じてレントゲン写真・エコー・MRIなどの画像評価が必要になります。

スジや筋や神経の痛み占める割合が大きい変形性関節症に対しては、Fascia リリースを行うことで痛みの軽減が期待できます。

一方、痛みの原因の割合が滑膜炎である場合が大きく占めている場合には、関節内に適切な薬液を注射してもらったりすることで、痛みがより和らぐ可能性があります。

このように、構造の変形(例:変形性◯◯、◯◯狭窄症)を示唆する病名と、MPSなどのFasciaに関連した症状はよく合併します。

Q3 線維筋痛症と筋膜性疼痛症候群(MPS)は同じですか?

A)両方とも「筋痛症(きんつうしょう)」と呼ばれることもあり、混同されやすい病気です。

MPSの重症化したものは線維筋痛症とも言われる場合もありますが、線維筋痛症は「脳が何らかの原因で敏感になってしまった状態」のことであり、MPSは「手足や体の筋のコリなどによる症状」のことです。

しかし、多発するMPSによる痛みなどの症状は、脳を慢性的に刺激し脳を敏感にさせてしまうという報告もされています。そのため、MPSと線維筋痛症の境界は現時点でも議論されています。

ただし、MPSの場合は、全身で同時に痛み、しびれが発生することは基本的には無く、片肩、首、腰、片足など特定の部位、若しくはその複数の部位の組み合わせで発生をします。