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一般社団法人 日本整形内科学研究会

【オンライン抄録掲載】第2回学術集会(2019年11月30日-12月1日) - お知らせ

第2回学術集会のプログラムはこちら。

2019年11月8日現在の内容です。今後、適宜更新されます。

Contents

2019年11月30日(土)の特別講演・教育講演

16:15〜16:45[大会長講演]整形内科学が展望する多職種連携の姿〜局所治療と生活サポートの融合を目指して〜

【タイトル】整形内科学が展望する多職種連携の姿〜局所治療と生活サポートの融合を目指して〜
【演者】並木宏文
【所属】公益社団法人地域医療振興協会 十勝いけだ地域医療センター、JNOS理事・北海道東北ブロック長
【座長】白石吉彦(JNOS副会長・隠岐島前病院院長)、洞口敬(JNOS副会長・日本大学整形外科)

【抄録】

高齢化が進む日本において、運動器疼痛や運動器障害を持ちながらも生活する住民は増え続けている。日本の僻地・離島における運動器疼痛の需要に関する調査では、運動器疾患に関する受診理由の割合が20%以上と報告される。整形外科医だけで対応できる範囲を超えた地域の実情に、総合診療医や内科医等の医師や、療法士や鍼灸師ら多職種らと共同で進める整形内科的活動の展開が地域で期待されている。局所治療としては、生理食塩水などを用いたエコーガイド下ファシアリリース(注射:ハイドロリリースを含む)の発展により、内科医であっても安全かつ効果的な局所治療が実施可能となった。そして、さらに重要な整形内科的活動の一側面に今回は焦点を当てる。それが、目の前にある局所の発痛源に対する評価・治療手技だけはなく、それを入り口とした悪化因子への生活動作評価・介入である。特に、ケアの量・質が患者に直結しやすい非都市部(例:へき地・離島、在宅医療)では、即時的効果が高い。

本講演では、私が活動してきた2地域(沖縄県の離島、北海道のへき地)で行政・住民に受け入れられた整形内科的活動の一部を紹介する(2019年11月23日刊行(予定)の特集「肩こり・腰痛・膝痛患者に対する整形内科的生活指導」(日本医事新報社「週刊・日本医事新報」)でも紹介)。

沖縄県の離島では、伝統工芸従事者への介入を通じて島の歴史・文化への間接的なサポート、高齢農業従事者への多業種連携により医療と農業の連携強化、その他にも農家へのセルフケア指導、漁師の包丁選び、ウォーキングルート作成、そして島外支援者(主に臨床検査技師ら)と共同実施した運動器エコー検診などを実施した。

北海道のへき地では、地域の現場で使えるコミュニケーション手法を通じて医療・介護関係従事者の関係深化を目指した活動、皮膚刺激ツール等(例:ソマセプト®)を活用した医療・介護従事者同士がケアを行うための基盤作りを通じた地域ケア拡充に係る活動、その他にも整形外科医・近隣開業医・高次医療機関の関係職種を含めた研修会、酪農農家へのセルフケア指導、障害者支援(例:小物作成時の作業環境指導)などを実施した。

今後も、住民・行政・医療者が当事者意識をもちながら、目の前の患者から地域全体に介入し、サポート・セルフケアを円滑に進めるためのインフラの構築に加えて、その根底となる住民、行政、及び医療・介護職らの人間関係の円滑化をサポートすることで、整形内科的地域活動が適切に地域へ融合していくことを展望している。局所治療による発痛源の治療技術の向上と、生活サポート等による悪化因子への対応という「両輪」を回していくことが、これからの整形内科的活動には極めて重要である。

16:45〜17:15[会長講演] 最近のトピックス~アンギオソーム(Angiosome)を活用した発痛源評価と治療、束間神経上膜リリース、母指痛症候群(thumb pain syndrome)~

【タイトル】最近のトピックス~アンギオソーム(Angiosome)を活用した発痛源評価と治療、束間神経上膜リリース、母指痛症候群(thumb pain syndrome)~
【演者】木村裕明
【所属】医療法人Fascia研究会 木村ペインクリニック、JNOS会長
【座長】白石吉彦(JNOS副会長・隠岐島前病院院長)、洞口敬(JNOS副会長・日本大学整形外科)

【抄録】

エコーガイド下fasciaハイドロリリースを実施するにあたり、多職種連携による発痛評価は非常に重要であり、以下の事項を具体的に検討する:整形学的検査、発痛時の動作分析、可動域評価、詳細な圧痛(エコーガイド下触診含む)、末梢神経の分布、関連痛のパターン、デルマトーム(dermatome)、ファシアトーム(Fasciatome)などである。今回は、以下3つに関して報告する。

1)アンギオソーム(Angiosome)を利用した発痛源評価。アンギオソーム(BJPS, 1987)とは、体組織がどの源血管によって血液供給されているかを表した血流地図である。血管周囲のfasciaには、自由神経終末が豊富に存在し、この部位のリリースは、慢性痛や交感神経に関係する疼痛に効果的である可能性がある。アンギオソームを参考に同定した責任血管周囲のfasciaの重積部(stacking fascia)をリリースする。リリース後に血流改善に伴う反応を患者が自覚することが多い。

2)束間神経上膜(interfascicular epineurium)のリリース。いわば末梢神経の神経上膜内リリースである。末梢神経周囲のリリースは以前より実施され、その有効性の報告は増えている。しかし、その効果が不十分な場合には束間神経上膜(interfascicular epineurium)のリリースを検討している。今回はその具体的な注意点や適応、そして有効性に関して現時点の考えを報告する。

3)母指痛症候群(thumb pain syndrome)。拇指に痛み、痺れをきたす疾患として、ドケルバン病、母指CM関節症、手根管症候群、Intersection syndromeなどがあるが、共通のfascia異常が原因であることが多い。そのため2019年7月に木村・小林が、これらを包括する概念としてthumb pain syndromeを提唱した。今回は、この観点からみた評価法と治療法について解説する。

17:15〜17:45[教育講演] fascia概論(Fascial pain syndrome(FPS)分類基準、Hydroreleaseとhydrodissectionの差異など)~JNOS学術局の活動報告含む~

【タイトル】fascia概論(Fascial pain syndrome(FPS)分類基準、Hydroreleaseとhydrodissectionの差異など)~JNOS学術局の活動報告含む~
【演者】小林只
【所属】弘前大学医学部総合診療部、社団法人日本整形内科学研究会学術局長
【座長】白石吉彦(JNOS副会長・隠岐島前病院院長)、洞口敬(JNOS副会長・日本大学整形外科)

【抄録】

当会学術局は、fasciaに係る言葉の定義(特に下記1,3,4)に関して、下記11で提示した学会および海外と議論を進めていく。本講演では、この1年間の当会(JNOS)学術局の活動を振りつつ、現時点の定義を共有し、今後の研究および臨床の発展の土台を固めることを期待する。

  1. Fasciaの解剖学的概念の整理・提案:ネットワーク機能を有する「目視可能な線維構成体」
  1. 本分野に係る用語定義の再設定:癒着 Adhesion, 凝集 Cohesion、滑走姓 Gliding、伸張性extensibility、アンカリングanckeringなど
  2. Fascial pain syndrome(FPS)分類基準の提唱
  3. Hydroreleaseとhydrodissectionの差異の明示(ミルフィーユサインとドーナツサイン
  4. JNOSのグローバルサイトの開設(2019年10月)
  5. 2019年度 一般社団法人日本整形内科学研究会(JNOS)研究支援制度(2019年5月)
  6. Carla Stecco先生特別講演の開催(2019年8月)
  7. ケアネットDVD「Dr白石のLet’sエコー:運動器編」の監修
  8. Virtual reality(VR)を活用した遠隔教育の仕組みの開発(VR Japan)(書籍:スマートテクノロジー
  9. 論文:僧帽筋と菱形筋の間にエコーガイド下fasciaハイドロリリースで1mlの薬液注入後の広がりをご献体で検証(Kimura et al. Pain Medicine.2019)、エコー画像上のfascia重積像が発痛源である可能性(Kurosawa et al. Pain medicine 2019/11/ accepted)
  10. 書籍・連載記事の紹介:「整形内科的生活指導(日本医事新報社特集)2019年11月23日」、「痛み探偵の事件簿(日本医事新報社連載中)」、Fasciaの英語書籍の翻訳(David Lesondak. Fascia – What is is and why it matters: 2017)2019年1月刊行予定。英語書籍の分担執筆:Fascia: The Tensional Network of the Human Body(第2版)
  11. 2020年に当会が関与する学会等の情報提供(日大スポーツ医学勉強会in東京神楽坂スポーツセミナーin東京整形外科超音波学会in奈良JOSKAS/JOSSM in札幌など)

上記1~7の情報はすべて、当会ホームページ(日本語は医療関係者向け、英語はfor medical professionals)で提示してある。

18:00〜19:30[特別講演] 外科医にとっての新しいFascia像~高精細内視鏡による近接拡大視から見えてきた生体組織~

【タイトル】外科医にとっての新しいFascia像~高精細内視鏡による近接拡大視から見えてきた生体組織~
【演者】川島清隆
【所属】栃木県立がんセンター泌尿器科科長 
【座長】小林只(弘前大学医学部総合診療部、JNOS学術局長)

【抄録】準備中

1)2019年12月1日(日)の一般演題

【座長】洞口敬(日本大学病院整形外科、JNOS副会長)、並木宏文(十勝いけだ地域医療センター、JNOS理事)

一般演題1)エコー所見において坐骨神経の破格が原因による殿部痛と考えられた一症例

【タイトル】エコー所見において坐骨神経の破格が原因による殿部痛と考えられた一症例
【演者】○逆瀬川 雄介1) 2)、鵜川 浩一1) 2)、銭田 良博1) 2)
【所属】1)株式会社ゼニタ銭田治療院千種駅前、2)えとうリウマチ整形外科

【抄録】

【背景】肉眼解剖の先行研究において、坐骨神経には解剖学的破格が存在することが言われている。解剖学的破格の診断は、齋藤らは体性感覚誘発電位検査の梨状筋症候群診断率が92.6%、伊集院らはMRIでT2強調画像と拡散強調画像の融合画像によりBeaton分類B型の坐骨神経破格所見を診断しているが、明らかな画像所見を伴わないものが多い、と述べている。今回、エコー所見において坐骨神経の破格が原因と思われる殿部痛の症例を経験したので、以下に報告する。

【症例】50歳代女性。職業は介護職。主症状は、腰から足にかけての痛み、しびれ。2019年3月3日より症状が出現し、5月7日に当院来院。本人が考えられる原因は、昨年12月に右膝骨折した際の体重移動がアンバランスだったことと考えている。朝は痛くないが、昼・夕・夜が痛い。症状が出現した時から、週1回鍼治療に通っていたが改善せず、尋常でない痛みが出現していたため、他の鍼灸マッサージ師に紹介され当院に来院。しびれの訴えは、両殿部と両踵部周囲が主で、たまに下腿後面中央に出現する。

【治療および経過】エコー所見:腸骨をメルクマールとした短軸像で、梨状筋の上下に坐骨神経を確認。坐位による疼痛著明。Patrick test(-)、後大腿皮神経のtinel sign(+)、SIJ test(-)、dial test(-)。5月7日より週1回の頻度で来院。両上後腸骨棘から梨状筋周囲、坐骨結節周囲、大腿および下腿後面Fasciaリリース(徒手・鍼)実施。徒手療法は、坐骨神経の走行を意識して行う。鍼治療部位は、梨状筋上と梨状筋下Fasciaを同部位で深さを変え、他に坐骨結節周囲、膝窩、踵骨周囲に行った。治療経過:7月10日、上後腸骨棘のすぐ下を圧迫すると、小指までひびく。7月17日、少しずつ良い感じがしている。8月14日、症状は快方に向かっているが、お尻の一部が痛い。9月18日、仕事中や歩行中は痛みが気にならなくなったが、長時間地面に座っていると痛くなることがある。

【考察】Beatonは、坐骨神経の解剖学的破格を伴った梨状筋症候群について、A坐骨神経が梨状筋の下を走行する(90%)、B坐骨神経が二分して梨状筋の中と下を走行する(7%)、C坐骨神経が二分して梨状筋の上と下を走行する(2%)、D坐骨神経が梨状筋の筋腹の中を走行する(1%)、E坐骨神経が梨状筋の上を走行する(<1%)と述べている。本症例は、Cのタイプであることが考えられた。

一般演題2)2年前から続くめまいに対しエコー下鍼治療と理学療法の併用により改善した症例

【タイトル】2年前から続くめまいに対しエコー下鍼治療と理学療法の併用により改善した症例
【演者】○佐藤 公一1) 、鵜川 浩一1)2) 、銭田 良博1) 2)
【所属】1)株式会社ゼニタ銭田治療院千種駅前、2)えとうリウマチ整形外科

【抄録】

【目的】当院では、鍼灸師と理学療法士が積極的に医療連携をしながら治療を行っている。この度、鍼灸治療と理学療法の併用により、症状が著明に改善した一症例について報告する。

【症例】59歳男性、会社員。主訴は、頚部および肩こりに伴うめまい。20年前から肩凝りに悩まされている。2年前から、めまいも伴うようになってきた。仕事は主にデスクワークで1日中パソコンを使用している。一日中ずっと左頚部から肩にかけて重い感じがする。

病院を受診しMRIを撮影したが、特に異常はないとの事。後に、整形外科クリニックにて理学療法を行っていたが、症状の変化が見られないため、理学療法士より鍼治療を勧められ当院を受診した。

【治療】治療1~3回目:両側僧帽筋、胸鎖乳突筋、斜角筋の筋間Fascia、C2~7棘突起周囲Fasciaに対して刺鍼。治療4回目:左頚部のstiffnessが残存するため、再評価実施。
評価:ジャクソンテスト(-)、スパーリングテスト(-)、結帯および結髪動作(-)、しびれ(-)、頚部ROM active passiveともに異常なし、C7~Th1横突起周囲Fascia stiffness(+) 触診:左頚部僧帽筋、肩甲挙筋、斜角筋、胸鎖乳突筋圧痛(+)、エコー下触診:胸鎖乳突筋highエコー像1~1.5cm深さで重積像(+)、同部位の圧痛(+)。
理学療法は、鍼治療後に週2回の頻度で継続して治療している。

【経過】治療1回目終了後は、頚部右側屈時に左頚の筋緊張残る。めまいも、1週間感じることはなかった。VAS7/10。治療2~3回目:以前に比べ頚部および肩周囲が軽くなり、めまいがおさまってきている。VAS6/10。治療4回目:頚部右側屈時に左頚部のstiffnessを訴えるため治療したところ、VAS2/10、頚部右側屈時のstiffnessが消失し、めまいも消失した。

【考察】頚部のROM、理学的検査共に異常は見られなかったが、触診により僧帽筋、胸鎖乳突筋、斜角筋の筋間のFasciaの異常が圧痛やstiffnessの原因と考え鍼治療を行ったところ、症状の軽減がみられた。また、理学療法を併用することにより頚部周囲の軟部組織のリリース、運動療法も合わせて行ったことが、症状の早期改善に繋がったものと考える。

【結語】鍼灸師と理学療法士による医療連携により、症例の症状に応じて鍼治療と理学療法を併用して行うことは、患者の症状の改善を早めるための有益な一手法であると考える。

一般演題3)アンギオソームを活用した発痛源評価とエコーガイド下fasciaハイドロリリース(US-FHR)で軽快した右上肢痛の一例

【タイトル】アンギオソームを活用した発痛源評価とエコーガイド下fasciaハイドロリリース(US-FHR)で軽快した右上肢痛の一例
【演者】○浅賀 亮哉、木村 裕明
【所属】医療法人Fascia研究会 木村ペインクリニック

【抄録】

【背景】アンギオソームangiosomeとは、体組織がどの源血管によって血液供給されているかを表した血流地図である。血管の外膜は “ファシアfascia”であると考えている。エコーガイド下fasciaハイドロリリース(以下、US-FHR)の実施には、適切な発痛源評価が前提となる。今回、通常の発痛源評価に加えて、アンギオソームの概念を用いた追加評価により発痛源を評価した。結果としてUS-FHRによる治療が奏効した右上肢痛の一例を報告する。

【症例】右上肢外側部の鈍痛を主訴とし、X日に来院した41歳、和裁士の女性。X-1ヶ月、仕事後に症状が出現。増悪寛解を繰り返し、安静時疼痛が常時出現したため当院を受診した。症状は、デルマトームにおける第6頸髄神経根領域に認めたが、感覚・運動・深部腱反射の神経学的異常所見はなし。Nerve tension test、Eden test、Wright testは陰性。Allen testは上肢の検査肢位のみで橈骨動脈の拍動減弱を認めた。肩関節可動域range of motion(以下、ROM)に制限は認められなかったが肘関節屈曲位で増悪する水平屈曲時痛と第3肢位外旋時でactive ROM、passive ROMに疼痛を認めた。 以上の評価結果から、胸郭出口症候群と上腕三頭筋長頭の伸張性、滑走性の低下を疑ったが明確な再現痛は認められなかった。そこで本症例はアンギオソームにおいて後上腕回旋動脈、上腕深動脈、橈骨動脈領域に症状が出現していることに注目した。医師により同部位の上腕深動脈周囲に対し生理食塩水2mlを用いてUS-FHRを施行し、1回の治療でPIS(pain intensity scale)が10(治療前)から2(治療後)までの改善を認めた。治療から1週間後、症状の再発は確認されていない。

【考察】US-FHRは、発痛源評価により異常が認められた部位を治療部位とする。しかし、血管周囲のファシアが発痛源の場合は、本症例のように通常の評価では発痛源が特定できない場合がある。そのような場合、アンギオソームを用いた発痛源評価が有効である。
今回、本症例においてアンギオソームを用いた発痛源評価により治療が奏効したことから、上腕深動脈周囲のファシアが発痛源であったと考えられる。

一般演題4)右手関節TFCC損傷に対する鍼灸・マッサージ治療の症例報告

【タイトル】右手関節TFCC損傷に対する鍼灸・マッサージ治療の症例報告
【演者】○船橋 徹至、銭田 良博
【所属】株式会社ゼニタ銭田治療院千種駅前

【抄録】

【症例】症例はプロの20代男性の総合格闘技プロ選手で、1年前より右手首の訴えが続いてる。昨年の同時期の試合中に左肩肩甲棘骨折し、保存療法で経過観察した。1年後に左肩の痛みが練習後に取れなくなって来院し、当院より整形外科を紹介したところ医師に手術を勧められ10月1日に偽関節整復およびプレート固定の手術を行った。なお今回の症例報告は、骨折前の練習の際に痛めた右手関節の痛みが1年を経過した現在も継続しており、当該部位に対する治療について報告を行うものである。

【症状】10月16日にMRI所見にて、右手関節TFCC損傷と診断された。尺骨茎状突起の外方にて圧痛所見が顕著にみられる。そのほか、右手関節尺側背屈時に、尺骨頭の外側縁に痛みが生じる。また前腕回内位にて再度圧痛を確認したところ、同部位に圧痛が見られた。エコーで確認したところ、対象は小指伸筋上Fasciaの滑走性低下が原因と推定した。
ROM:手関節のROMはpassiveにて背屈70°、activeでは尺側背屈時に運動痛を生じる。
Wrist Allenn test、Finger Allen test、Phalen test、Finkelstein test、Finger extension test、Scaphoid shift test,Grind test、ROM、 Joint mobility、しびれ、浮腫、熱感はすべて(-)であった。

【治療および経過】治療対象は小指伸筋とし、手関節周囲の組織の緊張緩和を目的としてFasciaリリース(徒手)と鍼治療を行った。各治療前の圧痛及び運動痛の所見により、1回目遠位橈尺関節部の小指伸筋走行部周囲、2回目以降は圧痛部位が広がり小指伸筋遠位(遠位橈尺関節部)より近位5㎝まで、3回目は小指伸筋起始まで、4回目以降は小指伸筋および総指伸筋へと施術部位を広げた。
当該部位の圧痛は1回目5/10、2回目4/10、3回目1/10となり、6回目でP(-)となった。また、動作時痛は無負荷ではP(-)であるが、自転車の運転や雨天時の傘の取り扱いなどで負荷がかかると痛みが生じる状態が見られた。握力については、21.3㎏であったが、7回目の施術後には39㎏まで回復した。

【考察】当初痛みの発現は尺骨茎状突起の外方に限局していたが、初期の施術において発痛部位の痛みが軽減することにより、小指伸筋全体の症状が顕在化してきたものと考えられる。小指伸筋の滑走性(伸縮性)が低下する中で、パフォーマンスを発揮しようとする際に、初痛部位にストレスが集中したことが一因と考えられる。
また、負荷をかけた際の痛みの発現については、当初の発痛部位に生じることから、当該部位に滑走性の解消していないFasciaが残存しているものと考える。

一般演題5)骨盤内fasciaの構造と変化―内視鏡生体解剖学のはじまり-

【タイトル】骨盤内fasciaの構造と変化―内視鏡生体解剖学のはじまり-
【演者】○谷村悟 、曽根原健太
【所属】富山県立中央病院産婦人科

【抄録】

【目的】Fasciaの変化は運動器の疼痛と関連することが報告されているが、骨盤内におけるfasciaの「変化」に関する報告はない。骨盤内fasciaの構造とその変化について報告する。

【方法】婦人科腹腔鏡手術時に主に4Kスコープを用い、拡大視野で構造を観察した。

【結果】Fasciaは立体的な格子構造を持ち、気腹によるCO2が入る前は透明な液体に満たされており、牽引により臓器と架橋を形成する。腹膜下、骨盤内臓神経周囲、膀胱腟間、毛細血管周囲などに存在し、それぞれ格子の大きさは異なる。子宮内膜症、骨盤臓器脱手術例の一部にfasciaの変化を観察し得た。変化は領域の縮小、格子の楕円形化、断裂、膜状変化などであった。

【結論】骨盤疾患で子宮内膜症、膀胱痛症候群、骨盤鬱血症候群における疼痛の原因は明らかとなっていない。私たちは腹膜下、骨盤内臓神経周囲、膀胱腟間のfasciaで構造変化を確認できた。Fasciaの構造の変化は病的状態を表している可能性がある。ホルマリンで固定した組織でfasciaの構造を観察することは困難であり、「内視鏡生体解剖学」と呼ぶべき手法により生きたfasciaの観察で病態の解明が期待できる。
今回私たちが観察し得たfasciaの変化に関する報告は他になく、難治性疼痛の原因とはまだ言えない。しかし、運動器領域から始まったfascia研究は、今まで見えていたが見ようとしなかった他部位のfasciaの観察を促し、各種難治性疼痛の診断・治療へとつながっていくと考える。

2)2019年12月1日(日)の指定演題(2019年度JNOS研究助成制度 受賞者)

【座長】小林只(弘前大学医学部総合診療部、JNOS学術局長)、小幡英章(福島県立医大痛み緩和医療センター部長、JNOS理事)、

指定演題1)瘢痕癒着モデルにおけるハイドロリリースの効果および新しいFasciaモデルの開発

【タイトル】瘢痕癒着モデルにおけるハイドロリリースの効果および新しいFasciaモデルの開発
【演者】○祐實 泰子1)、今北 英高1)、森 拓也2)、嘉摩 尻伸1)、額賀 翔太2)
【所属】1)畿央大学・健康科学研究科、2)奈良県立医科大学

【抄録】当日提示のみ。

指定演題2)ファシアハイドロリリース可視化のための連続せん断波エラストグラフィーの開発

【タイトル】ファシアハイドロリリース可視化のための連続せん断波エラストグラフィーの開発
【演者】○山越 芳樹1)、木村 裕明2)
【所属】1)群馬大学大学院理工学府、2)医療法人Fascia研究会 木村ペインクリニック

【抄録】

筋の弾性変化を1つの出発点とするファシアハイドロリリースの作用機序は複雑であり、この機序を詳細に解明するには筋の弾性変化を実時間でモニタリングしていくことが有用なツールになると考えられる。しかし弾性を可視化する従来のせん断波エラストグラフィは、骨が映像化領域の近傍にあると不要な温度上昇を生じることがあるので骨格筋への適用が推奨されていないこと、弾性の測定精度が十分でなく測定値にばらつきが見られることなど課題が指摘されている。本研究は群馬大の山越が発案した組織弾性を映像化する新しい方法(連続せん断波エラストグラフィ)をファシアハイドロリリースによる組織弾性変化の可視化に用いるために、新たな弾性可視化装置を開発することを目的としている。この方法はコイン型の小型加振器を皮膚表面にテーピングテープで張り付けて周波数60-100Hzで組織を加振する。加振により生体組織内に励起したせん断波の伝播の様子をカラードプラ法で可視化する方法であり、①振動振幅は1㎜以下であり生体に対して高い安全性を有する、②汎用のエコー装置をせん断波の映像化に使えるのでシステムが廉価、③せん断波の伝播を可視化するせん断波の伝播図から組織の弾性構造や組織の癒着が映像化できる、一方、せん断波の伝播速度図から弾性が映像化できるなど多くの特徴がある。図に予備実験の結果を示す。なお、被験者には説明と同意を得ている。縦軸はROI内の平均伝播速度(組織弾性率の平方根に比例)で横軸が経過時間であるが、針挿入後の硬さの変化、生理食塩水注入による硬さの時間的推移が明瞭に記録されている。現在、小型可搬型のタブレットエコーを用いた映像装置と従来のエコー装置を使った映像装置の2種類の装置を開発しているが、今後、開発を進めることで、生体組織の硬さの映像化をツールとしたファシアハイドロリリースの作用機序の解明に貢献したい。

図 ファシアハイドロリリースによる組織弾性の時間推移の計測結果

 

指定演題3)Fasciaの解剖学的ハイブリッド解析

【タイトル】Fasciaの解剖学的ハイブリッド解析
【演者】荒川高光
【所属】神戸大学大学院保健学研究科・リハビリテーション科学領域・准教授

【抄録】準備中

指定演題4)Fasciaの肉眼解剖学的および組織学的検討およびエコーガイド下fasciaハイドロリリースによる薬液の広がりの検証

【タイトル】Fasciaの肉眼解剖学的および組織学的検討およびエコーガイド下fasciaハイドロリリースによる薬液の広がりの検証

【演者】○黒沢理人1)2)、木村裕明2)3)、銭田良博2)4)、銭田智恵子2)4)、洞口敬5)、小林只2)6)
【所属】1)トリガーポイント治療院、2)日本大学医学部機能形態学系生体構造医学分野、3)木村ペインクリニック、4)銭田治療院千種駅前、5)日本大学病院整形外科、6)弘前大学医学部附属病院総合診療部

【抄録】

【背景・目的】近年、超音波診断装置(以下、エコー)などの高解像度の画像診断装置を用いた、fascia(ファシア)肉眼解剖学的および組織学的研究が世界的にも注目されている。Fasciaを対象とした注射治療手技の1つとして注目が高まる、エコーガイド下fasciaハイドロリリース Ultrasound-guided fascia hydrorelease(以下、USFHR)は本邦で開発された手技であり、本邦におけるファシアおよびUSFHRに係る解剖学的研究を進めることが必要である。我々は、これまでにもホルマリン固定のご献体を対象に、以下2項目の検証を2016年より進めてきた。1)対象組織および隣接する密性結合組織の連続性、並びにfasciaの肉眼解剖学的および組織学的な観察。2)前記密性結合組織間に正確に注入した色素の広がり、USFHRの安全な実施方法、および類推される治療効果の検証。そして、前研究として2019年には僧帽筋と菱形筋の間へのUSFHRの検証結果を国際誌に報告した(Kimura H, Kobayashi T, Zenita Y, Kurosawa A and Aizawa S. Expansion of 1 mL of Solution by Ultrasound-Guided Injection Between the Trapezius and Rhomboid Muscles: A Cadaver Study. Pain medicine. 2019)。本研究は、論文にも記載された先行研究の成果を元に、胸鎖乳突筋および周囲fasciaを対象として検証する。

【方法】以下の手順で実施する。

胸鎖乳突筋と前斜角筋の短軸像をエコーで撮像する。
エコー画像上で確認した、胸鎖乳突筋の深層の筋外膜と前斜角筋の浅層の筋外膜間に色素を交差法で1 mL注入する。
注入後、速やか解剖を開始する。剖出した周囲の筋・腱・筋膜・腱膜の位置関係と構造を明確にしながら、組織間の層構造を踏まえた、胸鎖乳突筋深層の筋外膜および斜角筋群・肩甲挙筋・腕神経叢・血管・リンパ周囲などへの色素の広がりを観察・計測・撮影する。
撮影した画像より、色素の広がりの面積はプログラムソフトを用いて測定する。
一部組織は顕微鏡下で組織学的観察を行う。
【予想される結果と考察】胸鎖乳突筋と前斜角筋の間に注入した場合、範囲として20cm2程度の広がり、およびfasciaの複数層構造への色素の広がりを確認できると予想する。頚部の上部における局所注射は頭頚部の疼痛および自律神経症状の発痛源としても重要であるが、局所麻酔薬を用いた場合は様々な副事象(例:横隔神経麻痺、上位頚神経根麻痺)が生じうる。しかし、USFHRでは前記副事象の発生リスクを限りなく低減させ、かつその臨床的有用性を期待できる。本研究結果は、頭頚部の難治性疼痛への安全かつ適切な治療手技の提案に寄与することを目指している。

指定演題5)関節リウマチ患者の、関節エコーで炎症を伴わないMTP関節痛に対するエコーガイド下ファシアハイドロリリースの効果の検証

【タイトル】関節リウマチ患者の、関節エコーで炎症を伴わないMTP関節痛に対するエコーガイド下ファシアハイドロリリースの効果の検証
【演者】○須田 万勢1)2)、村中 清春1)2)、蓑田 正祐1)2)
【所属】1)諏訪中央病院 総合診療科、2)諏訪中央病院 リウマチ膠原病内科

【抄録】当日提示のみ。