一般社団法人 日本整形内科学研究会

一般社団法人 日本整形内科学研究会

【オンライン抄録】第3回学術集会・第1回日本ファシア会議(2020年11月28日-11月29日) - お知らせ

順次、各演者の抄録を追加していきます。

第3回学術集会のプログラムはこちら。

Contents

2020年11月28日(土)の大会長講演・特別講演・教育講演・基調講演

15:15〜15:45 [大会長講演] 整形外科学と整形内科学(洞口敬)

【タイトル】整形外科学と整形内科学
【演者】洞口 敬
【所属】JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授
【座長】吉田 眞一 (JNOS理事、よしだ整形外科クリニック 院長)

【抄録】

本講演では、現代の整形外科医の抱えるジレンマを通して、私が感じている整形内科学の存在意義を論じたい。私がスポーツ整形の診療や現場に携わってきた結果、Fasciaと整形内科学研究会に出会うに至った必然性と、スポーツ整形診療の必須要素が最近の整形外科診療における不足要素と気付いた軌跡を解説する。そしてこれらの要素は、まさに整形内科学(Fasciaの概念と運動器エコーと多職種連携、全人的視点)が力を入れている部分でもあった。Fascia×エコーは、従来は理解しづらいとされた患者の主訴を心から聞き入れることを可能にし、具体的な対応方法を拡張させていることを伝えたい。

整形外科学は、あらゆる運動器(身体運動に関わる骨・筋肉・関節・神経などの総称)疾患に取り組む診療科である。『L’orthopédie』 (Andry 1741年)は、曲がったものを真っすぐにする矯正の義orthoと、小児を表す義のpédieから合成された新語であった。ここに外科的義の語は含まれていない。その後短期間に、当初の定義よりもはるか広範に人体の変形および運動機能障害を取り扱う学問となり、用語と現状が解離してきたとされる。「整形外科学」という言葉は本邦において、田代博士(1904年現ドイツから帰国)により邦訳・命名された。ここでは、保存加療も手術加療も内包させる広義の意味を込める意図が“整”にあるとされる。それから100年余りが過ぎ、特に基幹病院以上の医療機関が整形外科医に求める役割は、標榜名の通り、外科としての手術数とその効率で病院に寄与することへと顕著化している。また、アカデミアの視点からは、手術は関節別の縦割りに専門分化し、これに対応した専門的人材を求める流れは変わらない。このような背景から田代博士の時代から変化した“最近の整形外科学診療”の不足要素を相補する内容こそが“整形内科学”なのであろう。この学問が、内容を明確に表した用語を掲げながら研究構築される必要性を、私は以前よりもさらに強く感じるようになってきている。

15:45〜16:15 [特別講演]新しい疼痛の定義とポイント(小幡英章)

【タイトル】新しい疼痛の定義とポイント
【演者】小幡 英章
【所属】JNOS 理事、福島県立医大 痛み緩和医療センター 部長
【座長】小林 只 (JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師)

【抄録】準備中

16:30〜17:00 [会長講演]臨床・研究・教育現場における多職種連携について(木村裕明)

【タイトル】fasciaが紡ぐ臨床・研究・教育、そして多職種連携
【演者】木村 裕明
【所属】JNOS 会長・代表理事、木村ペインクリニック 院長
【座長】白石 吉彦 (JNOS副会長・理事、隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長)

【抄録】

エコーガイド下fasciaハイドロリリース(US-FHR)は主に生理食塩水を用い、神経周囲だけでなく、筋膜、血管周囲、腱、靭帯、脂肪体、関節包複合体などのfasciaを治療目標とする。この方法によって様々な難治性疼痛が治療可能になった。この治療において重要なことは、発痛源評価であり、整形学的検査、発痛時の動作分析、末梢神経分布、関連痛パターン、デルマトーム、Fasciatome、Angiosomeなど多様な観点から解剖学的に発痛源を推察した後、エコーでfasciaの重積像(Stacking fascia)を確認し、US-FHRを実施する。療法士は発痛源評価、用手的治療、動作指導・セルフケアを、鍼灸師は発痛源評価、鍼治療を、看護師はセルフケアと患者の心のケアを行う。

このようにクリニックであっても、エコー・解剖・動作分析等による共通言語を基にした多職種連携が、治療のスピードと精度を向上させる。今回は、当院における臨床・研究・教育の在り方と目標について紹介する。

17:15〜17:35 [教育講演]総合診療における整形内科学(白石吉彦)

【タイトル】総合診療における整形内科学
【演者】白石 吉彦
【所属】JNOS副会長・理事、隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長
【座長】小林 只 (JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師),銭田 良博(JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長)

【抄録】

我が国では2013年の「厚生労働省 専門医の在り方に関する検討会報告書」をもとに総合診療医を19番目の専門医として養成することとなった。2018年4月より新専門医制度として総合診療専門医の専門研修が開始されている。総合診療医は日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と障害などについて適切な初期対応と必要に応じた継続性が求められている。平たく言えば高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病、小児を含む風邪や腹痛などの急性疾患にくわえて怪我、障害などの診療を行う。一方で国民生活基礎調査の有訴率のトップ3は、腰痛、肩こり、関節痛、と運動器疾患が占める。にもかかわらず、実際には運動器のプロである整形外科医は臨床医約30万人中、6%の約18,000人に過ぎない。この状況で日本中のすべての地域において整形外科医のみで、すべての運動器疾患を診療することは不可能である。しかも現時点ではこれら運動器疾患の中で手術が必要なものはごくわずかであり、むしろ多くの場合、整形内科的対応が求められている。特に整形外科へのアクセスが限られる地方で働く総合診療医は、“適切に”運動器診療をおこなう必要があると考えている。この“適切に”という意味は運動器のすべてを診る、すべてを完結するわけではなく、手術が必要な症例は的確に整形外科医へ紹介するということである。そのために総合診療医の基本的能力の一つである多職種連携をフルに発揮しながら、整形外科医やリハビリなどとコラボしながら運動器診療の体制を築く必要がある。

総合診療医が整形内科診療を行うにあたって大きな武器となるのが、エコー、ハイドロリリース、そして先にも述べたリハビリとのコラボである。もともと総合診療医は腹部エコーや心エコーなどでエコーに対する親和性があることが多い。運動器疾患の知識の習得は必須であるが、プローブを当てる部位を内臓から運動器へ変え、エコー解剖を理解すれば整形内科診療への大きな一助となる。また、近年進歩の著しいエコーガイド下ハイドロリリースを併用することで治療的診断を行うことができる。これはピンポイントのリハビリ指示につながり、時には逆にリハビリから治療ポイントのアドバイスをもらうこともある。エコー画像を共通言語として他職種と診断、治療目標などを共有することができる。

また総合診療医は病気だけでなく、本人の生活、時には家族、そして地域の問題に目を向ける。疾患、障害の原因が本人の生活や癖、習慣にないかどうかを常に考え、患者とともに症状軽減、再発予防のために生活介入を行っていく。そして我が国の多くの運動器疾患に悩まされている患者のためには、今後も他職種での勉強会や後進への教育を行っていくことが重要と考えている。

17:35〜18:00 [教育講演]若手医師に対する整形内科教育(並木宏文)

【タイトル】若手医師に対する整形内科教育
【演者】並木 宏文
【所属】JNOS理事、地域医療振興協会 十勝いけだ地域医療センター
【座長】小林 只 (JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師), 銭田 良博(JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長)

【抄録】

整形内科の診療は運動器疼痛や難治性疼痛をNon-surgicalに診療していくための手法すべてを活用する。その診療範囲の特徴として、横断的かつ相補的に他科・他分野と連携していくため、個人の診療範囲に限定されないことが挙がる。

その中、“個人の診療範囲を最大限に拡げる”ための学習プロセスの向上と教育者の育成が期待されている。これまで、初学者を「これから始める方、始めたばかりの方とし、経験年数0-3年の者」、中級者を「やり始めたけど、技術を向上させたい方とし、経験年数4-7年の者」、上級者を「一通りの診療はできるが、難治性の患者へあと一歩の治療を求める方であり、新規技術の開発・工夫、既存技術と新規技術を融合させたい方とし、経験年数8年以上の者」(JNOSホームページ参照)としてきた。

学習者の中には、当分野を学んでいくプロセスと、自身が積み重ねてきた経験自体に不安を感じていることが多い。つまり、「知らないことを学ぶ」ことへの不安である。一方で、教育者の中には、学習者が経ていくプロセスを漠然と認識していることが多い。つまり、「自分が実践していることの言語化、そして自分と相手の認識のギャップ」を知ることである。

本講演では、主な学習対象者を若手医師(特に総合診療医および整形外科)とし、「学習者が基礎とすべき“症候学の重要性”」と「教育者が再認識を要する “知る、学ぶ、発見する”」について示すことで、これからの整形内科学の発展と若手医師達の日常診療に貢献することを目指す。加えて、これら若手医師らに対する学習方法は、「新しいことを知り、学び、実践する」という一般化した学習プロセスとして、他科・他職種にも役立つものと期待する

18:00〜18:20 [基調講演1]リハビリテーションおよび鍼灸臨床現場における整形内科教育(銭田良博)

【タイトル】リハビリテーションおよび鍼灸臨床現場における整形内科教育
【演者】銭田 良博
【所属】JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長
【座長】辻村 孝之(フィジオ/滋賀医科大学附属病院 学際的痛み治療センター)、小林 只 (JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師)

【抄録】

急性期・回復期・生活期施設に従事するリハビリテーション専門職、特に整形外科クリニックに勤務する理学療法士は、日頃から“整形内科部門”を担当している。

リハビリテーション専門職や鍼灸師にとって、整形内科学を教育する上のポイントは「Fascia」「エコー」「評価」「多職種連携」である。これら4点を卒前教育と卒後教育、そして臨床現場での実践を橋渡しすることが重要である。

理学療法士は卒前教育において、「西洋医学的評価」と「多職種連携」の視点は学ぶが、「Fascia」と「エコー」を学ぶ機会は稀である。鍼灸師は卒前教育において、東洋医学的概念として経絡経穴を必ず学ぶが、「エコー」「西洋医学的評価」「多職種連携」を学ぶ機会は稀である。鍼灸師にはFasciaの中に経穴が存在する可能性が高いことを、エコー下で鍼刺激をして普段の治療時の深さにある鍼先の位置にFasciaがあることを一目見れば、今まで刺激していた経穴が実はFasciaであったことが理解しやすい。医師やリハビリテーション専門職もそれを見れば、鍼灸師が常日頃行っている鍼治療を西洋医学的に理解することができるので、鍼灸師との連携が促進される。当院では、理学療法士と鍼灸師の交流を促しながら、「Fascia」と「エコー」の共通言語を共に学び合い続けるアクティブラーニングを実践している。

リハビリテーション専門職や鍼灸師に対する整形内科学のアクティブラーニングは、卒後教育における臨床環境としてエコーを自由に活用できる環境が重要である。当院や連携医院リハビリテーション科には、必ずエコーが導入されている。具体的な教育方法を例示する。On the job trainingとしては、ベテラン理学療法士&鍼灸師の臨床現場で実践する整形内科学的評価(問診・触診・動作分析・整形外科テスト・エコー・Fascia発痛源評価)からFasciaリリース治療(運動療法・徒手療法・物理療法・セルフケア・生活指導)の実技を、新人理学療法士および鍼灸師スタッフが見学する(可能であれば、補助として電子カルテ入力などのクラーク作業を行いながら見学する)。治療院から様々な診療科医師への、医療保険による訪問治療の報告書および紹介のための情報提供書作成を行う。Off the job trainingとしては、週1回程、様々な分野の外部講師を招いた勉強会、他院の医師やリハビリテーション専門職との合同勉強会を行っている。さらには、学会や研究会での積極的な発表、セミナー運営にも関わり、自身の技術や見識の社会における位置づけを学ぶ。

整形内科学において、リハビリテーション専門職や鍼灸師は患者を治療・ケアしていくための最高のパートナーであることを、医師や他職種に啓蒙していきたい。そのためには、自分の職種に誇りと自信をもてるよう日々の研鑽が重要である。

18:20〜18:45 [基調講演1]著作権を意識した解剖イラスト作成技術(黒沢理人)

【タイトル】著作権を意識した解剖イラスト作成技術
【演者】黒沢 理人
【所属】JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長
【座長】辻村 孝之(フィジオ/滋賀医科大学附属病院 学際的痛み治療センター)、小林 只 (JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師)

【抄録】

昨今、オンラインセミナーやウェビナーを各団体・個人が開催することが増えている。これまで「オフライン」で開催されてきたセミナーでは見過ごされてきた諸問題が「オンライン」になることで表面化してきた。その一例として、著作権法等に違反した解剖イラストや解剖図の利用が挙がる。正しい著作物の利用方法を知らないと「意図せず」であっても著作権侵害による不法行為として、民事上のトラブル(例:損害賠償)に巻き込まれてしまう。

今回は著作物性(作品のオリジナリティ、財産権、人格権)に応じた、解剖イラスト作成技術として、以下第12回JNOSウェビナーをご覧頂いた上で、「作品のオリジナリティ」を尊重した作図方法の一例を紹介する。

参考:JNOS学術局長・小林只「第12回JNOSウェビナー:オンラインセミナーおよび研究発表のための資料作成術~著作物のライセンス検索技術、著作物性に応じたリライト技術を中心に~」2020年8月22日. 概要・報告書はこちら。 Youtube動画はこちら(該当部は51:04~)

19:00〜19:25 [基調講演2]エコ-描出技術の一般化を目指した学習方法~医師と理学療法士の連携を目指して~(永野龍生)

【タイトル】エコー描出技術の一般化を目指した学習方法~医師と理学療法士の連携を目的として~
【演者】永野 龍生
【所属】JNOS理事、永野整形外科クリニック 院長
【座長】洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授)、山崎 瞬 (JNOS理事、NPO法人インクルーシブケア 代表理事)

【抄録】

新型コロナウイルス感染症は、人々の生活、医療機関の役割、患者さんの受療行動、セミナーの在り方などを変えてきた。しかしながら、どのような時代であっても、「高い診療技術」、「患者を治す・支えるというモチベーション」、「スタッフが安心して働ける状況」などの観点により医療現場は支えられている。

当院では、この時代に積極的に対応していくために、超音波診断装置(以下、エコー)の活用により上記観点のサポートを進めてきた。具体的には、エコ-の2画面動画(エコー動画と、プローブ操作や患者の姿勢などの外観動画が連動したもの)の作成、著作権等を適切に管理した上の解剖イラストの作成技術、そしてインターネットによる発信・情報共有である。これらを通じて、解剖・エコーの理解度を深め、Webセミナー時代におけるコンテンツ管理の見識を広げ、さらにはスタッフの協働作業というプロセスを通じて、院内のエコーを活用した診療技術および教育システムの一般化を目指している。

今回は、理学療法士を筆頭とした当院スタッフのモチべ-ション維持のために、臨床に役立つエコー描出技術のうち、誰にでもできる描出方法(一般化した学習方法)の例として、肩甲舌骨筋、前鋸筋、肩甲下筋の動画資料を提示する。

本発表が、当院スタッフの自信につながり、院内外の多職種連携を促し、さらにはWithコロナの時代における「共に学び続ける」ためのモチベーションを支える一助になれば幸いである。

19:25〜19:50 [基調講演2]膝疾患に対するエコーガイド下Fasciaハイドロリリースの基礎(谷掛洋平)

【タイトル】膝疾患に対するエコーガイド下Fasciaハイドロリリースの基礎
【演者】谷掛 洋平
【所属】JNOS会員管理局長・理事、谷掛整形外科 副院長
【座長】洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授)、山崎 瞬 (JNOS理事、NPO法人インクルーシブケア 代表理事)

【抄録】

運動器画像診断のゴールドスタンダードである単純レントゲン写真(以下、X-ray)は、骨組織以外の筋・腱・靱帯・神経・脂肪組織などの軟部組織の描出は困難であり、CT・MRIは骨組織以外の軟部組織の評価が可能ではあるものの、携帯性・被爆・コストの面から日常臨床における使用には制限がある。

近年の超音波画像診断装置(以下、エコー)の画質、携帯性の向上・低価格化に伴い、外来やベッドサイドにおける即時動態評価、即時診断だけでなく、病態によってはエコーガイド下注射等の即時精密治療が可能となってきた。

膝関節においても従来は見逃されやすかった軟部組織の動態を含めた病態がエコーで可視化されることで、関節外のエコーガイド下注射の治療効果が飛躍的に高まっている。今回、膝関節におけるエコーガイド下fasciaハイドロリリースを中心としたエコーカイド下注射の中でも日常診療で頻用する部位を中心に解説するが、治療部位を特定する診断能力はエコーガイド下注射の技術と同様に重要である。つまり、軟部組織を動態含めて詳細に可視化できるエコーもまた、X-ray、CT、MRIと同様に鮮明な画像であるが故に、可視化されていない隣接関節や体のアライメント等の対象関節以外の要素を意識させなくする要因になり得ることも忘れてはならない。

19:50〜20:15 [基調講演2]腰殿部痛に対するエコーガイド下Fasciaハイドロリリースの実際(吉田眞一)

【タイトル】腰殿部痛に対するエコーガイド下Fasciaハイドロリリースの実際
【演者】吉田 眞一
【所属】JNOS理事、よしだ整形外科クリニック 院長
【座長】洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授)、山崎 瞬 (JNOS理事、NPO法人インクルーシブケア 代表理事)

【抄録】

従来より単純X線検査、MRI検査による診断が腰痛疾患の主流とされ、殿部痛に至っては一部の梨状筋症候群以外はほとんど診断されていないことが一般的であった。しかし、最近の超音波診断学の進歩に伴い、脊柱管内病変を除けば一般整形外科外来の症例に対し多くの腰殿部痛に対する診断・治療が可能と考える。本講演では治療頻度の多い椎間関節、仙腸関節、坐骨神経などの超音波診断法とエコーガイド下fasciaハイドロリリースによる治療法の実際について紹介する。

2) 2020年11月29日(日) の一般演題・指定演題

内容調整中

3) 2020年11月29日(日) の第1回日本ファシア会議

13:30〜13:45 [指定演題1]Fasciaに対する実態・言語・歴史(小林只)

【タイトル】Fasciaに対する実態・言語・歴史
【演者】小林 只
【所属】JNOS学術局長・理事、弘前大学医学部附属病院 総合診療部 学内講師
【座長】洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授),銭田 良博(JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長)

【抄録】

Ferdinand de Saussure(1857-1913)曰く「人間は、記号という『概念の単位』により現実世界を切り分けている。」と、つまり異言語間の語の意味は一対一で対応しない(例:靱帯/間膜とLigament)。そして、解剖学的な境界、そして境界で区切られた構造物の名前は、観察者が恣意的に定めてきた(例:関節包複合体)。これは「虹は何色か?」という認識のように、観察者の言葉と認識に依存する。

Johan Huizinga(1872-1945)曰く「歴史は、過去に起きた、我々にとって重要な出来事の『解釈interpretation』である」と、つまり歴史とは「事実」ではなく「解釈」であった。

Frederic Wood Jones(1879-1954)曰く『人体解剖において、fasciaは本当の重要性および機能を無視して説明されるが、fasciaはそれ自体が有益かつ興味深く、 fasciaほど実地解剖学の研究で医学や手術へ実用的に貢献できる組織はない。』と、歴史的に「結合組織」は「その他」に分類され、単に構造を支持するだけの「不活性組織」と解釈されてきた。

近年はfascia/間質という言葉とともに「生きている臓器・組織」として、より具体的には「システム(系)『fascia system』、マクロ解剖の臓器(構造)『A fascia』、そしてミクロ解剖の線維『fibrils』として、各組織や器官を繋ぎ・支え、知覚する線維構成体という実態として再認識され始めた。

13:45〜14:00 [指定演題2]Fasciaの基礎と臨床(今北英高)

【タイトル】Fasciaの基礎と臨床
【演者】今北 英高
【所属】JNOS理事、畿央大学大学院 健康科学研究科教授
【座長】洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授),銭田 良博(JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長)

【抄録】

Fasciaが大きく注目されはじめ、まだ10年も経っていない。

Fasciaは、機能面を重視した『fascia system』と、肉眼解剖の意味で捉えた『a fascia』、ミクロ解剖の意味での『fibrils』という概念に分けられる。そのfasciaには、『神経系;nervous system』にも似たネットワーク機能が存在し、『Fascintegrity(造語)』という構造学的意味を含む言葉まで造り出されるほどの身体支持性を有し、FasciacyteというFasciaそのものを生成する細胞まで発見されている。ミクロ解剖において、Fasciaを構成している大元は、線維成分としてのコラーゲン線維や弾性線維、基質成分としてのグリコサミノグリカンやヒアルロン酸、そしてそれらを生成することの出来る線維芽細胞などである。

本演題では、Fasciaの基礎と臨床と題し、上記したミクロ解剖から機能解剖におけるFasciaの有する能力と、それに関連する研究内容を紹介していく。

14:00〜14:15 [指定演題3]エコーガイド下Fasciaハイドロリリースの最新知見(木村裕明)

【タイトル】エコーガイド下Fasciaハイドロリリースの最新知見
【演者】木村 裕明
【所属】JNOS 会長・代表理事、木村ペインクリニック 院長
【座長】洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授),銭田 良博(JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長)

【抄録】

整形外科、麻酔科、膠原病内科、神経内科、泌尿器科、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科など多くの分野で原因不明とされてきた「痛み・しびれ」の一因として、fasciaに注目が集まってきた。

2014年に我々が考案したエコーガイド下fasciaハイドロリリースTM(US-FHR)は、多くの難治性症状を解決してきた。

Fasciaは全身を繋ぎ・支える線維性組織である。筋膜、靭帯、腱、皮下組織、末梢神経周囲・末梢神経内、動脈周囲、骨膜など、従来の疾患名に惑わされず「発痛源」としての解剖学的部位を探求してきた。そして新しい評価方法・治療部位を発見する度に、治る患者は増える。一方、未発見の治療部位は多く残されている。

今回は、私が当会で紹介してきた、腰痛、鼠径部痛、肘外側部痛、下腿外側部痛、歯科領域の痛み、Thumb pain syndromeなどに対して、新たに発見し有効性に確信を得ている治療部位に対するUS-FHRを紹介する。

14:15〜14:30 [指定演題4]Fasciaに対するエコーガイド下鍼治療(黒沢理人)

【タイトル】Fasciaに対するエコーガイド下鍼治療
【演者】黒沢 理人
【所属】JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長
【座長】洞口 敬(JNOS 副会長・理事、日本大学病院 整形外科 診療准教授),銭田 良博(JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長)

【抄録】

エコーガイド下鍼治療(US-DN:Ultrasound-guided Dry needling)とは、発痛源となる筋膜、靭帯、神経周囲、血管周囲などのfasciaに対してエコーガイド下に鍼治療を行う手技である。従来の鍼治療と比較したメリットは以下である。

  1. エコーを用いることで鍼灸治療の適応か否かの判断が可能(例:断裂など構造異常、急性炎症などの病態)
  2. 発痛源への正確な刺鍼が可能
  3. 危険部位(例:胸膜、腹膜、末梢神経)を認識した上の刺鍼が可能
  4. 患者に鍼治療行為自体を見せることが可能
  5. 評価と治療部位を他治療者らと共有可能。

今回は、「US-DNの基本技術」と「fasciaと経穴(ツボ)との関係性」関して提示する。

14:45〜15:00 [指定演題5]Fasciaに対する運動療法の基礎(辻村孝之)

【タイトル】Fasciaに対する徒手療法と運動療法の基礎
【演者】辻村 孝之
【所属】フィジオ/滋賀医科大学附属病院 学際的痛み治療センター
【座長】白石 吉彦 (JNOS副会長・理事、隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長)、黒沢 理人(JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長)

【抄録】

リハビリテーション医学を基盤とした理学療法の代表的介入方法として、徒手療法、運動療法が存在する。ICF(国際生活機能分類)を踏まえ「生きることの全体」と「個別性」を重んじるリハビリテーション医学においても、ミリメートル単位までを意識した軟部組織の精密な局所評価により発痛源source of painを確認し、その背景に在る機能障害・悪化因子を評価し、組織や細胞に対する作用をイメージしながら理学療法を実施することは重要である。

理学療法分野における徒手療法は1900年代初頭にJames Mennell MDが理学療法士向けに書籍を出版しマニュアルセラピーmanual therapyという言葉を初めて使ったといわれており、今日に至るまで先人の英知ともいえる幾つもの「神経‐筋‐関節」の機能障害に対する徒手療法や分類に基づく理学療法が開発されている。

一方Fasciaは1788年に初めて解剖学用語として記述されたものの、その臨床的・解剖学的な重要性はあまり認識されていなかった。しかしながら、2018年にICD-11に新たな人体の基本構造物としてFasciaが追加され、その認知度が急速に広がりつつある。Fasciaは「ネットワーク機能を有する目視可能な線維構成体」であり「全身にある臓器を覆い、接続し、情報伝達を担う線維性の網目状組織。臓器の動きを滑らかにし、これを支え、保護して位置を保つ。」と表現されており、筋膜Myofasciaに加えて腱、靭帯、脂肪、胸膜・心膜など内臓を包む膜などの骨格筋と無関係な部位にも存在する。

今日まで「神経‐筋‐関節」の機能障害に対して、「神経」「筋」「関節」という各パーツに対して実施されてきた徒手療法や運動療法は、これらの構造の間をつなぐ存在、即ち「-」に相当する基本構造物であるFasciaの機能解剖学的意義を「神経‐筋‐関節」という関連性と繋がりにおいて再考される必要があると考える。

本講演では、徒手療法や運動療法に活かすFasciaの基礎研究の知見と、当会で提示しているfasciaリリースの分類である「直接法」と「間接法」のうち、直接法における徒手療法の整理を試みている途中の分類(例:筋収縮を使ったFasciaリリース、他動的Fasciaリリース、運動によるFasciaリリース、道具を使ったFasciaリリース)を紹介する。具体例としては、非特異的腰痛で重要とされる胸腰筋膜の評価とFasciaリリースを提示する。

本講演が、当会の目指す医師や理学療法士を含む医療者間のパートナーシップの向上、東洋医学と西洋医学の相互尊重、そして運動器疼痛患者やリハビリテーション概念を基盤に働く理学療法士の活動の一助になれば幸いである。

15:00〜15:15 [指定演題6]Fasciaに対する物理療法の基礎(銭田良博)

【タイトル】Fasciaに対する物理療法の基礎
【演者】銭田 良博
【所属】JNOS副会長・理事、株式会社ゼニタ 代表取締役社長
【座長】白石 吉彦 (JNOS副会長・理事、隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長)、黒沢 理人(JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長)

【抄録】

温泉は、世界中で好まれている。42℃前後の温泉に5分~15分程入ると、だんだんと全身が体表の皮膚から徐々に深層の軟部組織まで温かくなり、温まると軟部組織が徐々に柔らかくなる。そして、気分もリラックスする(自律神経系がコントロールされ精神的に落ち着く)。お風呂を出た後は喉が渇き、食事を美味しく食べることができ、消化・吸収・排泄機能も促進される。そして、温泉に入った夜はよく眠れるようになる。温泉に入ったことによる全身の温熱刺激はまさしくFasciaを温めている、とも言える。温熱刺激がFasciaの粘弾性を変化させる(=柔らかくする)という報告もある。

物理療法は、生体の適応と禁忌を考慮すれば誰でも安全に実施でき、その種類も多い。医療機関においては診療報酬が算定できる物理療法刺激もあり、体外衝撃波疼痛治療術・超音波による骨折または難治性骨折治療法、などがその例である。理学療法士が物理療法として扱う物理刺激には、温熱・寒冷・低周波・中周波・高周波・干渉波・マイクロカレント・超音波・レーザー・紫外線・イオントフォレーシス、などが挙がる。これらは、皮膚・筋・腱・血管・神経・リンパなどに影響し、疼痛緩和、炎症改善、創傷治癒、筋緊張緩和・筋力増強、自律神経系の調整などに役立つと報告される。

fasciaの観点では、コラーゲン線維の伸張性改善・血流の変化・浸透圧の変化、なども報告されているが、Fasciaに対する物理療法の効果を検証することは簡単ではない。その代表例は「Fasciaと他組織を如何に分離し、刺激を与え分けられるか?」である。例えば基礎研究としては、皮下や深部温および血流を、深さ(=層)を分けて計測できるデバイスを製作すること、Fasciaの硬さ(粘性、弾性、ヤング率、剛性率、歪み、せん断応力、圧縮応力、引張応力など多数の「硬さ」を分離評価する必要がある)を計測する装置を開発すること、せん断波エラストグラフィー機能があるエコーを用いてFasciaの動態解析をしながら研究すること、ラットを使った基礎研究を行うこと、などが挙げられる。臨床研究としては、刺激の種類自体は高い再現性がある研究プロトコルが作成できるという物理刺激の優れた特徴を活かした研究が進むことが期待される。

今回は、物理療法の種類と治療効果についての概説と症例報告に加えて、Fasciaに対する物理療法の基礎・臨床研究の未来について、感性工学的研究を行っている立場から提案する。

15:15〜15:30 [指定演題7]Fasciaに対するセルフケア・生活指導の基礎(山崎瞬 )

【タイトル】Fasciaに対するセルフケア・生活指導の基礎
【演者】山崎 瞬 
【所属】JNOS理事、NPO法人インクルーシブケア 代表理事
【座長】白石 吉彦 (JNOS副会長・理事、隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長)、黒沢 理人(JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長)

【抄録】

昨今の超高齢社会の進行に伴い、その対応策としてのセルフケアもあらためて見直されている。WHOでは「健康を促進し、病気を予防し、健康を維持し、医療提供者の支援の有無にかかわらず病気や障害に対処する個人、家族、コミュニティの能力」と定義されており、個人だけでなくその周囲の環境を含む概念であることが分かる。理想的な概念であるが、このような観点から患者のセルフケアにアプローチするとなると、一体どこを切り口にしてどのような方略でアプローチすべきなのか迷ってしまう。

Fasciaは既存の様々な痛みや症状に対するケア方法、治療方法について、職種を超えて統合していくことのできる概念である。患者の症状(外傷ではなく、機能障害としての範疇)は一定の期間を経て積み重ねて作られた状態であり、その構成因子は患者ごとに異なっている。また患者の年齢により、社会的役割や必要とする能力も異なるため、セルフケアの目標設定や方法の提案に大きく影響する。セルフケアにおける医療従事者の役割の要点は、悪化因子(身体、心理、生活)をいかにして分析し、患者が日常生活において実行可能な方法を提案できるかである。本演題ではFasciaの悪化因子をICF(国際生活機能分類)と時間軸から整理し、理学療法士の「生活機能をみる」観点からいかにして悪化因子を分析し、実行可能な方法を患者に助言できるかについて提案したい。

15:30〜15:45 [指定演題8]Fasciaに注目した手術手技(川島清隆)

【タイトル】Fasciaに注目した手術手技
【演者】川島 清隆
【所属】熊谷総合病院泌尿器科 泌尿器科長
【座長】白石 吉彦 (JNOS副会長・理事、隠岐広域連合立隠岐島前病院 院長)、黒沢 理人(JNOS理事、トリガーポイント治療院 院長)

【抄録】

手術において「臓器を覆い、つなげるfascia」の意義は正しく認識されてこなかった。術者はこれまで“筋膜(術者が従来の手術解剖において認識してきた言葉としての“筋膜”)”、疎性結合組織、脂肪などを個別の構造体として認識し、特別の注意を払うこと無く切開、剥離、除去してきた。さらに前述の意味における“筋膜”は、確固たる膜様構造として認識され剥離のメルクマールとして利用される一方で、実際の手術では途中で不明瞭になり見失う、層間の剥離においていつの間にか別の層間に入ってしまう、術者間の認識が合致しないという曖昧さを含んでいた。

近年fasciaはコラーゲンなどの線維等で構成される立体的網目状構造(線維状構造)と理解される。そして線維の密度や配列、組成等を変え、疎性から密性の結合組織または脂肪組織を代表とするような多彩な表現型をとるとされている。構造にはgradient(傾斜)があり、変化は連続的である。代表的組織名称を与えられた構造が独立して存在するわけでは無いことの理解が重要である。細胞から連続し、臓器を覆うfasciaは、隣接する臓器との境界部で線維が密になり膜状の表現型をとると考えれば、前述した“筋膜”の曖昧さが良く理解できる。膜の解剖に意識の高い術者の間ではこれまでも2層の“筋膜”間を厳密に剥離する “fascial plane dissection”が行われてきた。互いに接する2層の“筋膜”間には牽引により疎な線維状構造が出現する。これは、2層のうち、より構造の弱い方の“筋膜”が破綻して線維状に現れると考えられてきた。そして、この線維の対側のfasciaへ付着する最辺縁部位を精密に電気メスで切断して剥離を進めることが最も正確な剥離となるとされてきた。“筋膜”という膜状構造としての理解から、立体的網目状構造である広義のfasciaへと認識を変えることで、本術式の本質の理解が深まり、剥離の精度は劇的に向上する。更に、近年は極めて正確に、かつ熱損傷を最小限に抑えて線維を切断できる新しい電気メスも登場し、より精度が高く、低侵襲な剥離が可能になった。

Fasciaは細胞に足場を与え、臓器を包み、隔てる構造であり、かつ臓器の形態を形成・維持し、身体を統合する重要なシステムである。この線維状構造の中へ“切り込む”ことは、fasciaの破壊と同義である。Fasciaの損傷を最小限に抑えること、fasciaの連続性を極力保つことが真に低侵襲で正確な手術の実現に繋がると考える。

Copyright , Dr. Kawashima (author)